福岡高等裁判所 平成6年(ネ)547号 判決 1996年4月25日
平成六年(ネ)第一〇五号事件・同第一七二号事件控訴人
山内興産株式会社
右代表者代表取締役
末吉トヨ
平成六年(ネ)第一七二号事件控訴人
ジョイホーム株式会社
(旧商号 株式会社山内開発)
右代表者代表取締役
末吉和喜
右両名訴訟代理人弁護士
吉田雄策
平成六年(ネ)第一〇五号事件被控訴人
シャルム田町管理組合理事長
福本喜之
外四五名
右四六名訴訟代理人弁護士
三津橋彬
笹森学
田中峯子
吉田康
鈴木高志
石川善一
花井増實
折田泰宏
中村広明
河村利行
石口俊一
吉野正
中島繁樹
村井正昭
梅野茂夫
矢野正剛
三浦邦俊
椛島修
山喜多浩朗
中村仁
山上知裕
佐藤進
服部弘昭
荒牧啓一
金弘正則
村山博俊
松本光二
〔以下、平成六年(ネ)第一〇五号事件・同第一七二号事件控訴人山内興産株式会社を「控訴人山内興産」と、同第一七二号事件控訴人ジョイホーム株式会社を「控訴人ジョイホーム」と、両名を一括して「控訴人ら」と、同第一〇五号事件被控訴人シャルム田町管理組合理事長福本喜之を「被控訴人福本(管理組合理事長)」と、同第一七二号事件被控訴人らを、個別には「被控訴人○○」と、一括して「被控訴人ら」と、各当事者参加事件被控訴参加人らを、個別には「被控訴参加人○○」と、一括して「被控訴参加人ら」と、脱退被参加人・被控訴人らを、個別には「脱退被控訴人○○」と、一括して、「脱退被控訴人ら」と、それぞれ表示する。〕
主文
平成六年(ネ)第一〇五号事件
控訴人山内興産の控訴を棄却する。
平成六年(ネ)第一七二号事件
一 控訴人ジョイホームの控訴に基づき、原判決主文第三項1を次のとおり変更する。
1 控訴人ジョイホームは、別表記載1の被控訴人らに対し、原判決別紙物件目録1記載の土地につき、同表記載の右被控訴人らの各共有持分あて、控訴人山内興産への各移転登記手続をせよ。
2 別表記載2の被控訴人らの控訴人ジョイホームに対する請求及び同表記載1の被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
二 控訴人山内興産の控訴に基づき、原判決主文第三項2及び3を次のとおり変更する。
1 控訴人山内興産は、別表記載1の被控訴人ら(被控訴人山縣光幸及び同日本橋建物株式会社を除く。)に対し、原判決別紙物件目録1記載の土地につき、同表記載の同被控訴人らの各共有持分の移転登記手続をせよ。
2 控訴人山内興産は、被控訴人山縣光幸に対し、同目録1記載の土地につき、訴外豊村征晴(千葉県市川市川南一丁目一番八号)への共有持分一一三七九三〇分の二三七二の移転登記手続をせよ。
3 控訴人山内興産は、被控訴人日本橋建物株式会社に対し、同目録1記載の土地につき、訴外西村恵美子(福岡県北九州市小倉北区大手町一〇番五〇―一一二号)への共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記手続をせよ。
4 別表記載2の被控訴人らの控訴人山内興産に対する請求をいずれも棄却する。
各当事者参加事件
一 原判決別紙物件目録記載1の土地につき、控訴人山内興産に対する、
(1) 脱退被控訴人伊藤トミ子の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人溝口隆一に、
(2) 脱退被控訴人永江賢二の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人松本勝重に、
(3) 脱退被控訴人小山アサ子の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人池島富士恵に、
(4) 脱退被控訴人堤久也の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人福田滋に、
(5) 脱退被控訴人形井清子の共有持分一一三七九三〇分の一一八九の移転登記請求権が被控訴参加人山口知晴に、
それぞれ属することを確認する。
二 控訴人山内興産は、別表記載1の被控訴参加人らに対し、同目録1記載の土地につき、同表記載の右被控訴参加人らの各共有持分の移転登記手続をせよ。
三 別表記載2の被控訴参加人らの控訴人らに対する各請求をいずれも棄却する。
全事件共通
控訴人山内興産と被控訴人福本(管理組合理事長)との間に生じた控訴費用は控訴人山内興産の負担とし、控訴人らと別表記載2の被控訴人らとの間に生じた訴訟費用は、第一、二審とも同被控訴人らの負担とし、控訴人らとその余の被控訴人らとの間に生じた第一、二審の訴訟費用は控訴人らの負担とし、控訴人山内興産と別表記載2の被控訴参加人らとの間に生じた参加費用は同被控訴参加人らの負担とし、控訴人山内興産とその余の被控訴参加人らとの間に生じた参加費用は控訴人山内興産の負担とする。
事実及び理由
第一 申立
控訴の趣旨
平成六年(ネ)第一〇五号事件
1 原判決中控訴人山内興産敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人福本(管理組合理事長)の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人福本(管理組合理事長)の負担とする。
平成六年(ネ)第一七二号事件
1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
参加請求の趣旨
平成六年(ネ)第五四七号
1 被控訴人形井洋の控訴人山内興産に対する原判決別紙物件目録記載1の土地(以下「本件敷地」という。)の共有持分一一三七九三〇分の七三二の移転登記請求権が被控訴参加人山口和也に属することを確認する。
2 脱退被控訴人形井清子の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一一八九の移転登記請求権が被控訴参加人山口知晴に属することを確認する。
3 控訴人山内興産は被控訴参加人山口和也に対し、本件敷地につき、共有持分一一三七九三〇分の七三二の移転登記手続をせよ。
4 控訴人山内興産は被控訴参加人山口知晴に対し、本件敷地につき、共有持分一一三七九三〇分の一一八九の移転登記手続をせよ。
5 参加費用は控訴人らの負担とする。
平成六年(ネ)第五四八号
1 脱退被控訴人堤久也の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人福田滋に属することを確認する。
2 控訴人山内興産は被控訴参加人福田滋に対し、本件敷地につき、共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記手続をせよ。
3 参加費用は控訴人らの負担とする。
平成六年(ネ)第五四九号
1 脱退被控訴人小山アサ子の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人池島富士恵に属することを確認する。
2 控訴人山内興産は被控訴参加人池島富士恵に対し、本件敷地につき、共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記手続をせよ。
3 参加費用は控訴人らの負担とする。
平成六年(ネ)第五五〇号
1 脱退被控訴人伊藤トミ子の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人溝口隆一に属することを確認する。
2 控訴人山内興産は被控訴参加人溝口隆一に対し、本件敷地につき、共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記手続をせよ。
3 参加費用は控訴人らの負担とする。
平成六年(ネ)第五五一号
1 脱退被控訴人永江賢二の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人松本勝重に属することを確認する。
2 控訴人山内興産は被控訴参加人松本勝重に対し、本件敷地につき、共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記手続をせよ。
3 参加費用は控訴人らの負担とする。
平成六年(ネ)第五五二号
1 脱退被控訴人伊藤信行及び同伊藤直子の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分合計一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人小山田千鶴に属することを確認する。
2 控訴人山内興産は被控訴参加人小山田千鶴に対し、本件敷地につき、共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記手続をせよ。
3 参加費用は控訴人らの負担とする。
第二 事案の概要
一 本件は、(1) マンション分譲に際し、区分所有者の共有となるべき敷地の一部に設けた駐車場の専用使用権を、駐車場の使用を希望する特定の購入者に有償で譲渡して対価を収受したマンション分譲業者である控訴人山内興産に対し、区分所有者全員によって構成される管理組合の代表者である被控訴人福本(管理組合理事長)において、主位的には不当利得返還請求権、予備的には委任契約における委任者の受任者に対する委任事務処理上受取った金員の引渡請求権に基づき、右駐車場使用権の譲渡代金の総額にあたる一四四〇万円及び遅延損害金の支払を請求し、(2) 被控訴人福本(管理組合理事長)を除くその余の被控訴人ら(脱退被控訴人らを含む。)において、マンション売買契約では、敷地の共有持分はすべて区分所有者に移転されることになっていたのに、もとマンションの敷地を所有し、これを控訴人山内興産に売り渡した控訴人ジョイホームは、登記簿上なお若干の共有持分を留保しており、かつ、控訴人山内興産は区分所有者に対し右売買契約に基づく共有持分の移転登記をなすべき義務を履行していないとして、控訴人ジョイホームに対し、控訴人山内興産に右共有持分の移転登記手続をなすべきこと、控訴人山内興産に対し、専有部分の床面積の割合による共有持分移転登記手続をなすべきことを請求し、控訴人らは、右各請求を争ったが、原審は、(1)の主位的請求は棄却したものの、予備的請求のほぼ全部を認容し、(2)の請求を全部認容したため、控訴人らが控訴した事案である。
(なお、マンション区分所有権の移転に伴い、被控訴参加人らは、当審において、それぞれ民訴法七一条により当事者参加し、脱退被控訴人らは、控訴人らの同意を得て、訴訟から脱退した。)。
二 当事者双方の主張は、以下に訂正削除するほかは、原判決事実摘示中の「第二 当事者の主張」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一二枚目表八行目に「後記(二)ないし(五)」とあるのを「後記(二)ないし(四)」と改め、同一〇行目から同裏四行目までに「永江賢二」「小山アサ子」「堤久也」「伊藤信行」「伊藤直子」及び「形井清子」とあるのを削除する。
2 同一四枚目表末行から同裏六行目までを、次のとおり改める。
「二 各参加請求の原因
1(一) 脱退被控訴人伊藤トミ子は、平成二年四月一日、訴外伊藤諒の死亡により、同人が有していた建物番号二〇二号に係る本件各売買契約に基づく本件敷地共有持分の移転登記請求権を相続により取得した。
(二) 被控訴参加人溝口隆一は、同年一一月五日ころ、脱退被控訴人伊藤トミ子から、建物番号二〇二号に係る本件敷地共有持分権及び本訴請求に係る控訴人らに対する各共有持分移転登記請求権の譲渡を受けた。
(三) よって、被控訴参加人溝口隆一は、控訴人らに対し、脱退被控訴人伊藤トミ子の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人溝口隆一に属することの確認を求めるとともに、控訴人山内興産に対し右共有持分の移転登記手続を求める。
2(一) 被控訴参加人松本勝重は、平成三年二月二五日ころ、脱退被控訴人永江賢二から、建物番号四〇二号に係る本件敷地共有持分権及び本訴請求に係る控訴人らに対する各共有持分移転登記請求権の譲渡を受けた。
(二) よって、被控訴参加人松本勝重は、控訴人らに対し、脱退被控訴人永江賢二の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人松本勝重に属することの確認を求めるとともに、控訴人山内興産に対し右共有持分の移転登記手続を求める。
3(一) 被控訴参加人池島富士恵は、平成六年四月一一日ころ、脱退被控訴人小山アサ子から、建物番号五〇三号に係る本件敷地共有持分権及び本訴請求に係る控訴人らに対する各共有持分移転登記請求権の譲渡を受けた。
(二) よって、被控訴参加人池島富士恵は、控訴人らに対し、脱退被控訴人小山アサ子の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人池島富士恵に属することの確認を求めるとともに、控訴人山内興産に対し右共有持分の移転登記手続を求める。
4(一) 被控訴参加人福田滋は、平成三年一二月五日ころ、脱退被控訴人堤久也から、建物番号九〇二号に係る本件敷地共有持分権及び本訴請求に係る控訴人らに対する各共有持分移転登記請求権の譲渡を受けた。
(二) よって、被控訴参加人福田滋は、控訴人らに対し、脱退被控訴人堤久也の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人福田滋に属することの確認を求めるとともに、控訴人山内興産に対し右共有持分の移転登記手続を求める。
5(一) 被控訴参加人小山田千鶴は、平成四年九月二八日ころ、脱退被控訴人伊藤信行及び同伊藤直子から、建物番号一〇〇三号に係る本件敷地共有持分権及び本訴請求に係る控訴人らに対する各共有持分移転登記請求権の譲渡を受けた。
(二) よって、被控訴参加人小山田千鶴は、控訴人らに対し、脱退被控訴人伊藤信行及び同伊藤直子の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一八八〇の移転登記請求権が被控訴参加人小山田千鶴に属することの確認を求めるとともに、控訴人山内興産に対し右共有持分の移転登記手続を求める。
6(一) 平成五年四月一二日ころ、被控訴参加人山口和也は、被控訴人形井洋から、同被控訴人の建物番号一一〇一号に係る本件敷地共有持分権及び本訴請求に係る控訴人らに対する各共有持分移転登記請求権の譲渡を受け、被控訴参加人山口知晴は、脱退被控訴人形井清子から、同脱退被控訴人の建物番号一一〇一号に係る本件敷地共有持分権及び本訴請求に係る控訴人らに対する各共有持分移転登記請求権の譲渡を受けた。
(二) よって、被控訴参加人山口和也は、控訴人らに対し、脱退被控訴人形井洋の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の七三二の移転登記請求権が被控訴参加人山口和也に属することの確認を求めるとともに、控訴人山内興産に対し右共有持分の移転登記手続を求め、被控訴参加人山口知晴は、控訴人山内興産に対し、控訴人らに対し、脱退被控訴人形井清子の控訴人山内興産に対する本件敷地の共有持分一一三七九三〇分の一一八九二の移転登記請求権が被控訴参加人山口知晴に属することの確認を求めるとともに、控訴人山内興産に対し右共有持分の移転登記手続を求める。」
3 同一四枚目裏七行目冒頭の「二」を「三」に改める。
4 同一九枚目表末行から同裏九行目までを、次のとおり改める。
「四 被控訴人らの請求原因2及び被控訴参加人らの参加請求の原因に対する抗弁(控訴人両名)
控訴人山内興産は、本件敷地の共有持分につき、被控訴人竹内ヒロ子、同末吉富美子、同堀江信子、同寒野つゆ子、同小野則夫、同藤原千代子、同田中政文、同板東光康、同杉本光枝、同髙本英治、同中原義憲、同形井洋及び脱退被控訴人伊藤信行に対し、原判決別表の②記載の共有持分のほかに、それぞれ二四九〇分の一二ずつの共有持分移転登記手続を了した。」
第三 証拠
原審及び当審記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
第四 判断
一 当裁判所は、被控訴人福本(管理組合理事長)の控訴人山内興産に対する請求(予備的請求)は、原判決が認容した限度で正当であり、被控訴人ら及び被控訴参加人らの控訴人両名に対する各請求については、一部の被控訴人ら及び被控訴参加人らの請求は全部失当であり、その余の被控訴人ら及び被控訴参加人らの請求は一部正当であり、その余は失当と判断する。その理由は、以下のとおり付加訂正削除するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決二三枚目表四行目から同三〇枚目表二行目までを、次のとおり改める。
「(二) 控訴人山内興産による駐車場専用使用権分譲の法的性質
(1) 控訴人山内興産と本件マンション購入者らとの間の各土地付区分建物売買契約書(全員に共通の定型書式で、売買目的物件、代金額及び代金支払方法の記入が個別になされたもの。甲一号証、同二一号証は購入者二名の分)には要旨「本件マンションの買主は、専用駐車場の代金として別途一二〇万円を控訴人山内興産に支払う。」、「本件マンションの買主は、本件敷地の一部を駐車場として特定の区分所有者に専用使用させることを認諾する」という条項があるほか、本件マンション購入者のうち駐車場専用使用権の分譲を受けた者の売買契約書には、売買目的物件の表示の中に「駐車場」として特定の駐車区画の番号が表示されている。しかし、右契約書上、駐車場である特定の駐車区画につき、いかなる権利が売買の目的とされたのか、「駐車場の代金」とはどういう意味か、控訴人山内興産がいかなる権利ないし立場に基づいて代金の支払を受けるのかは明らかではなく、また、買主において、売主である控訴人山内興産が駐車場の専用使用権を分譲する権限を留保することを承諾する、ないしは、控訴人山内興産が駐車場専用使用権譲渡の対価を取得することを承諾するなどの趣旨を明記した条項はない。
控訴人山内興産が売買契約締結時に本件マンション購入者全員に交付した重要事項説明書(甲四号証、同二〇号証は、うち二名の分)には、駐車場専用使用権に関する記載は皆無である(不動文字で印刷された「専用使用権に関する規約の定め」という部分が全部斜線により抹消されている。)。
なお、控訴人山内興産は、本件マンションの各購入者に対し、標準的な管理組合規約案を示し、管理組合を結成したときは参考にするようにと申し向けたのみで、いわゆる原始管理組合規約案として、購入者全員の承諾を得ることはせず、また、本件マンションの分譲が完了し、管理組合が成立するまでの間の建物共用部分及び本件敷地の管理、使用業務につき、自ら委任を受けて実行する旨の管理委託契約等も締結しなかった。
右のとおり、売買契約書及び重要事項説明書の記載によっては、本件マンションの駐車場専用使用権の性質、内容、効力等を確定することはできず、また、控訴人山内興産がどのような権限ないし立場に基づいて、駐車場専用使用権の分譲を行い、対価の交付を受けたのかも不分明であるといわざるを得ない。
(2) ところで、控訴人山内興産は、駐車区画の割り当てに伴って収受した金員を自己の利益として保持し、返還ないし引渡義務を争っている。このような控訴人山内興産の態度からは、控訴人山内興産は、本件マンションの分譲にあたり、営利の目的で、売買の目的物に含まれる本件敷地に駐車区画を設け、各区画につき、マンション購入者中の希望者に対し、駐車場専用使用権を譲渡したとして所定の対価の支払を受け、これを自己の利益として収受したものと解するほかない。
(三) 控訴人山内興産による駐車場専用使用権分譲の効力
(1) 本件マンションの各売買契約においては、建物の各区分所有権とともに本件敷地の共有持分も目的とされ、本件敷地は区分所有者全員の共有に属し、各自の共有持分は、建物専有部分の総床面積に対する当該区分所有者が有する専有部分の床面積の割合によるとされていたものと認められる(前記売買契約書第五条。この点に関し、原審証人末吉藤三郎は、駐車場専用使用権の分譲を受けた者に対し、一定の本件敷地共有持分を移転することになっていたが、契約書を訂正するのを失念していた旨証言するが、措信できない。)。
したがって、分譲が完了した後は、本件敷地は区分所有者全員の共有となるのであるから、その一部を駐車場として特定の区分所有者が専用使用する権利を設定することを含め、その管理使用(用益)に関する事項は、共有者である区分所有者全員の意思によって決定されるべきことがらである。したがって、分譲完了後は本件敷地について何らの権利も保有しなくなることが予定されていた控訴人山内興産は、これに容喙し得る立場にはないし、また、専用使用権を有する区分所有者に対し駐車場を専用使用させる義務を負担し、かつ、右専用使用により当該駐車場部分の使用ができないという損失を受けるのは、他の共有者(区分所有者)であって、控訴人山内興産は何らの義務も負担せず、損失を受けることもないのであるから、控訴人山内興産が自己の意思のみにより、駐車場専用使用の対価を自らの利得として収受し得る根拠はない。
更に、混同の法理により、本件敷地を所有していた控訴人山内興産において、自己の意思のみによっては、分譲前にあらかじめ本件敷地につき自己のために地上権、地役権、賃借権、使用借権その他の用益権を設定しておくことはできないのであるから、右用益権が付着した状態で本件敷地を売却し、これとは別に、用益権を他に譲渡し得る余地はない。
してみると、控訴人山内興産において、本件マンションの購入者に対し、建物区分所有権とともに本件敷地の所有権(共有持分)を売却し、なおかつ、購入者の一部に対し、別個に本件敷地の一部の駐車場専用使用権を有償で譲渡したというのは、結局のところ、一物を二重に譲渡し、あるいは、自己に属さない権利を譲渡したことにほかならないのではないかという疑念が生じるところである。
(2) 右の点について控訴人山内興産は、同控訴人は本件マンションの購入者との分譲契約において駐車場専用使用権を設定し、これにより同控訴人に留保された右専用使用権を譲渡したものであると主張しており、これは、本件敷地所有権から専用使用権を分離してその余を売却することは有効である(買主らは買受を承諾しており、これはとりもなおさず右のような方法による売却に同意していることになる。)との主張と解されるので、すすんで検討する。
この駐車場専用使用権については、土地付マンションの分譲者は、購入者全員の承諾があるときは、マンションの敷地の一部につき、駐車場として専用使用する権利を有償で購入者中の一部の者に譲渡する権利を留保し、または、購入者中の一部の者に有償で専用使用権を設定する権利を留保したうえで、この留保された権利に基づき、駐車場専用使用権を譲渡もしくは設定し、その対価の支払いを受けて、これを自己の利得とする考え方がある。
(3) これを一般化すると、土地の売買にあたり、所有権を用益権と用益権を除いたその余の部分とに分離し、それぞれ別個に処分することは、契約自由の原則により、売主と買主の意思の合致があれば、可能であり、許容されるということになる。しかし、このような土地所有権の中味の分離処分とでもいうべきものは、これが仮に行われることがあるとしても、極めて特殊な場合に限られると考えられ、もとより、通常人が、その法的な意味、性質、拘束力などを常識として理解し、社会的に相当かつ公平な取引の一形態として是認しているというものではないうえ、これにより、売主は、土地所有権(ただし、用益権に相応する権能を欠くもの。)譲渡の対価と用益権譲渡の対価とを得ることができ、両者の設定の仕方によっては、単純な土地売買の場合を上回る利益を取得し得る可能性があり、しかも、売主は、土地用益に関して何らの義務も負担しないのに対し、買主は、売主が他に譲渡または設定した用益権によって制限された土地所有権を取得するにすぎず、更には、売主が取得した用益権の対価が将来にわたる土地使用の対価の前払いの趣旨である場合は、ただ用益させる義務を負担するのみで、所有権の実質的な価値を享受できないにもかかわらず、低下した価値に相応しない高額の代金での買受を承諾してしまうなど、不公正な取引となるおそれがある。したがって、このような分離処分の合意は、それ自体直ちに無効とはいえないとしても、合意の成否、なかんずく買主の意思の存否の判定は慎重になされるべきである。
(4) 特に、土地付マンション分譲の場合は、売買契約の主たる目的は建物の区分所有権であり、建物の敷地である土地は、耐用年数の長い堅固な建物が存在するため、独立した財産としての意味はないといってよく、しかも、土地所有権は多数の購入者に細分化された共有持分として売却されることから、購入者は、自己の取得した敷地の共有持分が、敷地全体に及ぶ使用収益権を含む全面的な支配権たる所有権の割合的な一部にほかならないことを十分に意識せず、そのため、共有者が共有敷地の一部である駐車場を使用するにつき、なぜ敷地自体については何らの権利も有しない分譲者に対価を支払わなければならないのか、共有敷地の一部を特定の共有者が駐車場として専用使用することにより、他の共有者は当該駐車場部分を使用できないという損失を受けるのに、専用使用の対価が共有者に支払われず、分譲者が取得するのはいかなる根拠によるものかなどの疑問を抱かないまま、土地付マンション分譲あるいは駐車場専用使用に関する契約に応じてしまうおそれがある。また、一般消費者たる購入者は、専門の分譲業者が定めた一律の契約条件(約款)にしたがって契約するかしないかの自由しか持たず、対等の個別交渉及び契約条件の設定によって実質的公平を保持し得る余地は皆無といって良いことに鑑みると、この場合に契約自由の原則を適用するのは、不公平な取引を是認し、助長する結果になるだけではないかと考えられる。
これに対し、マンション分譲者は、駐車場専用使用権の分譲により利益を得られることを考慮してマンション自体の販売価格を低く設定しているから、駐車場専用使用権の分譲により二重に利得してはおらず、他方、駐車場専用使用権の分譲を受けなかった購入者は、同使用権の代価を支払って分譲を受けた者の負担のもとに、低い価格でマンションを取得できるのであり、かくして右三者間の実質的公平は保たれており、不公平な取引とはいえないという見解がある。しかし、分譲者がマンションとは別に駐車場専用使用権を分譲することにより利益を得ようと企図していることは明らかではあるものの、右利益を計算に入れてマンション自体の分譲価格を引き下げ、全体として利益が不当に大きくならないように自らを律しているのか、それとも、マンションの分譲価格及びこれによる利益を引き下げることなく設定し、右による利益を取得しながら、更に利益を上乗せするために駐車場専用使用権の分譲という方策を取ったのかについては、これを客観的に検証し、判定する手段はないのであるから、右見解には根拠がないというほかない。また、当該マンションの周辺市場において、一定の規模、規格のマンションの相場価格というものがあり、これを超える販売価格を設定すると競争力を失うため、マンション自体の販売価格を低く設定せざるを得ず、分譲者が正当な利益を確保するには、駐車場などの専用使用権の分譲という方策を取らざるを得ないという論理があるが、仮に、このような経済的観点からの議論に幾分かの妥当性があるとしても、それによって、駐車場専用使用権分譲の法的な正当性が基礎付けられるものではない。
(5) ところで、建設省は、各都道府県知事及び関係業界団体に宛て「民間分譲中高層共同住宅(分譲マンション)に係る施工管理の徹底、取引の公正の確保及び管理の適正化について」と題する通知(昭和五四年一二月一五日建設省計動発第一一六、一一七号、建設省住指発第二五七、二五八号。甲二八号証の一)を発し、分譲マンションにつき、いまだに適正を欠く取引等があり、購入者からの苦情が減少を見ないので、各注意事項につき、より一層の周知徹底及び指導を行い、関係法令の適正な執行に配慮することを求めたが、そのうち「共有敷地等における使用収益関係等の明確化」として「共有敷地及び建物の共有部分の権利関係、使用収益関係をめぐって紛争を生じる事例が多いことにかんがみ、取引段階においてこれらを明確にすること。特に、分譲業者が共有敷地等に専用使用権を設定してその使用料を得る等の例は、現在少なくなっているが、取引の形態としては好ましくないので、原則として、このような方法は避けること。また、専用使用権の設定に当たっては、存続期間、使用料等について公正かつ妥当なものとし、これらを管理規約等において明定するとともに、これから生ずる収益等については、修繕積立金への繰り入れにより区分所有者の共有財産に帰属させる等公正な処理を行うこと」としており、また、宅地建物取引業法の改正により、同法三五条一項五号の二、同施行規則一六条の二第三号に、共用部分に関して専用使用権があるときは、その内容を重要事項説明書の中で説明しなければならない旨規定されたことを受け、各都道府県主管部長に宛て「宅地建物取引業法及び積立式宅地建物販売業法の一部を改正する法律、宅地建物取引業法施行令及び地方公共団体手数料令の一部を改正する省令の施行について」と題する通達(昭和五五年一二月一日建設省計動発第一〇五号。甲二八号証の二)を発し、改正法令の周知徹底、法の運用に万全を期するべき旨を求めているが、そのうち、重要事項説明書における駐車場専用使用権に関する説明の具体的内容につき「専用使用権は、通常、駐車場、専用庭、バルコニー等に設定されるものであるが、このうち駐車場については特に紛争が多発していることにかんがみ、その「内容」としては、専用使用をなし得る者の範囲、専用使用料の有無、専用使用料を徴収している場合にあってはその帰属先等を記載すること」としている。
これらの通知・通達は、これが発せられた昭和五四、五五年の当時、マンション分譲者が区分所有者の共有に属する敷地の一部に自己のために駐車場専用使用権を設定し、当該駐車場を自ら使用し、あるいは、他に賃貸して賃料を収受するなどして、敷地の共有者であるマンション区分所有者との間で紛争を生じる例が後を絶たないという背景のもとで、このような分譲者の行為は、不公正な取引にあたるおそれがあり、専用使用権を設定するとしても、その存続期間や使用料につき、管理規約等に公正妥当な定めをし、その収益は区分所有者の共有財産に帰属させるべきであり、かつ、法令にしたがい、これらの点を購入者に周知させるため、重要事項説明書に明記しなければならないとするものであり、これは、共有敷地の一部を駐車場として専用使用させることによる対価は、本来、共有敷地の所有者すなわち区分所有者全員ないしこれによって構成される管理組合が収受すべきものであり、分譲者が不明確な説明をし、十分な理解と認識を持てない購入者から形式的な承諾を取り付けただけでは、契約自由の原則の名のもとに、共有敷地を駐車場として自ら専用使用し、あるいは、他に賃貸して収益を得るなどの分譲者の営利行為を正当化することはできないという見解に基づいているものと解される。これらの通知・通達は強行法規ではないから、これに反するからといって、分譲業者による駐車場専用使用権の設定及び対価の収受に関する契約を直ちに無効ならしめるものではないが、少なくとも、このような通知・通達の趣旨に合致しない契約の効力を制限的に解釈することの根拠とはなり得るものと考えられる(なお、原審における被控訴人江口武司の供述及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らは、被控訴人らに対し、控訴人ジョイホームが本件敷地の共有持分二四九〇分の一二を留保していることを根拠として、一四区画の駐車場のうちの一区画につき専用使用権を有すると主張していることが認められ、これは、まさに、右通知・通達が不公正な取引にあたるおそれがあると指摘した行為に該当する。)。
(6) 本件マンションの場合、前述のとおり、各土地付区分建物売買契約書及び重要事項説明書の条項や記載内容からは、売買の目的物に駐車場専用使用権が含まれるかどうか、控訴人山内興産がどのような権限ないし立場で専用使用権を設定し、対価を収受するのかは明らかではないのみならず、駐車場専用使用権の性質、効力、存続期間等については、そもそも記載がないのであり、駐車場専用使用権の分譲を受けた本件マンション購入者において、取得した権利がどのような効力を有するのか、支払った対価が何の代価であるのか、本件敷地の共有持分に対応する分を含めて売買代金を支払ったのに、更に駐車場専用使用権を取得するために対価を支払わなければならない根拠、対価を控訴人山内興産が収受し得る根拠は何なのかなどの契約の基本的な部分について、明確な理解と認識を持ち得たとは解されず、駐車場専用使用権の分譲を受けなかった購入者も、他の区分所有者が駐車場を専用使用することにより自己が受ける不利益がやむを得ないものかどうか、その不利益がどの程度のもので、いつまで継続するのかなどについて十分理解したうえで駐車場専用使用権の設定があることを承諾したと解するのは困難である。
してみると、本件マンションの分譲に際し、控訴人山内興産と購入者全員との間において、控訴人山内興産が駐車場専用使用権を分譲し、対価を得ることについて、有効な合意が成立したと解することはできず、したがって、控訴人山内興産が駐車場専用使用権分譲の対価を収受し、これを正当な利得として保持し得る根拠はないというべきである。
(7) なお、後記のとおり、控訴人山内興産は、各購入者に対して本件敷地の共有持分の移転登記をなすに際し、原判決別表の②記載のとおり、売買契約に定められた割合に満たない共有持分の移転の登記をしたのみで、残余の持分二四九〇分の一六八のうち、二四九〇分の一二は控訴人ジョイホームのもとに、二四九〇分の一五六は控訴人山内興産のもとにそれぞれ留保し、その後、駐車場専用使用権の分譲を受けた購入者らに対し、各二四九〇分の一二ずつの本件敷地共有持分の移転登記をした。
駐車場専用使用権の分譲を受けた者らに対し、各二四九〇分の一二ずつ本件敷地共有持分の移転登記をした控訴人山内興産の行為がどのような趣旨目的のもとになされたのかは、必ずしも明らかではないが、そもそも、マンションの区分所有者全員がその専有部分の床面積の割合に応じて全部の共有持分を有するべき本件敷地につき、特定の区分所有者がその専有部分の床面積の割合に対応する持分のほかに共有持分を保有し得る余地はなく、また、本件敷地の一部である駐車場を特定の区分所有者の専有部分とすることもできないのである。そして、土地の共有者の一人は、その共有持分に応じて土地の使用収益をすることができるとはいえ、当然には、共有持分に応じた面積の特定の土地部分を独占的に使用できるものではなく、前記の二四九〇分の一二という共有持分が駐車場の面積に対応するものであったとしても、右共有持分を有する者が当然に特定の駐車場を独占的に使用できるものでもない。したがって、控訴人山内興産に駐車場専用使用権の分譲と右共有持分の移転とを関連させる意図があったとしても、控訴人山内興産が一部の購入者らについてした前記の取扱は無意味であり、何らの効果も生じないことは明らかである。
4 被控訴人福本(管理組合理事長)の控訴人山内興産に対する金員支払請求について
(一) 以上のとおり、控訴人山内興産による駐車場専用使用権の分譲はその効力を否定すべきであり、したがって、控訴人が収受した対価は法律上の原因がないのに取得した利益にあたるから、その返還請求として、本件敷地の共有者全員は、控訴人山内興産に対し、同控訴人が駐車場専用使用権の対価として収受した金額と同額の金員の支払を求めることができると解される。
(二) また、委任契約に基づく受任事務を処理するにつき、受任者が、外形的に委任の範囲内に属する行為を、自己のためにする意思のもとに行い、これにより金員を収受したときは、委任者は、受任者に対し、右金員を委任事務処理を行うにつき収受したものとし引渡を求めることができると解される。
本件の場合、控訴人山内興産と本件マンションの購入者らすなわち本件敷地の共有者全員との間に、本件敷地の管理に関する業務を行うことについての委任契約は締結されていないが、前述のとおり、本来、本件敷地の一部に特定の共有者のために駐車場専用使用権を設定し、対価を取得するのは、共有者全員の意思によって行うべき共有物の管理運営、使用収益の一態様あるいは、共有物の使用に関する共有者間の調整に属する行為であるから、控訴人山内興産が、本件敷地の共有者の一人となるべき本件マンション購入者全員に対し、特定の購入者のために、その者に代わって本件敷地の一部を駐車場として有償で専用使用することについての承諾を求め、本件マンション購入者全員が、控訴人山内興産に対し、その承諾を与えたことは、控訴人山内興産において、本件マンション購入者全員に対し、個別的に、本件敷地の管理運営、使用収益に属する行為、ないしは、本件敷地の使用に関する共有者相互間の調整を、共有者全員に代わって行うことを申し出て、本件マンション購入者全員が個別的にこれを承諾したことにより、右業務の遂行を控訴人山内興産に委任したものと解することができる。
してみれば、本件マンションの購入者すなわち共有者全員は、控訴人山内興産に対し、同控訴人が駐車場専用使用権分譲の対価として収受した金員を、委任事務を処理するにつき受取った金員として、その引渡を求めることができることとなる。
(三) 以上の次第で、本件マンションの区分所有者すなわち本件敷地の共有者全員によって構成される管理組合の代表者である被控訴人福本(管理組合理事長)が、管理組合のために、控訴人山内興産に対し、駐車場専用使用権分譲代金の引渡及びこれに対する遅延損害金の支払を求める請求は、一四一〇万円及びこれに対する本件訴状送達(請求)の日の翌日である平成二年一二月六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める限度で正当であり、その余は失当である。」
2 同三〇枚目表三行目に「請求原因2について」とあるのを「被控訴人らの請求原因2及び被控訴参加人らの参加請求の原因について」と、同表四行目に「本件原告のうち」とあるのを「被控訴人ら及び脱退被控訴人らのうち」と改める。
3 同三一枚目裏二行目の後に、次のとおり付加する。
「参加請求の原因1ないし6の各(一)の各事実については、控訴人らは明らかに争わないものと認められる。」
4 同三二枚目裏一行目から同六行目までを、次のとおり改める。
「三 控訴人らの抗弁について
1 前述のとおり、控訴人山内興産から被控訴人有馬貴晴、同山本敏幸、同山本孝、同山田泰三、同中村龍雄、同江口武司、同古殿憲一、同古殿フサ江、同多田隈優、脱退被控訴人永江賢二、被控訴人江口康弘、同福本喜之、脱退被控訴人小山アサ子、被控訴人安藤昌、同安藤黎子、同岡崎厚、同岡崎晴美、同浦田泉美、同城戸洋二、同大場景美、同後藤象次郎、同上畠政男、脱退被控訴人堤久也、被控訴人西里勇作、訴外伊藤諒、同豊村征靖、同西村惠美子、同國廣貞夫に対して移転登記がなされた本件敷地の共有持分が原判決別表の②記載のとおりであることは、当事者間に争いがなく、控訴人山内興産が、駐車場専用使用権の分譲を受けた被控訴人竹内ヒロ子、同末吉富美子、同堀江信子、同寒野つゆ子、同小野則夫、同藤原千代子、同田中政文、同板東光康、同杉本光枝、同髙本英治、同中原義憲、同形井洋及び脱退被控訴人伊藤信行に対して、原判決別表の②記載の各共有持分のほかに、各二四九〇分の一二ずつの共有持分の移転登記手続をしたことについては、被控訴人ら及び被控訴参加人らは明らかに争わないものと認められる。
2 右事実によれば、控訴人山内興産は、本件各売買契約に基づき、本件マンションの購入者に対し、各購入者が取得した専有部分の床面積の割合に応じた本件敷地の共有持分(原判決別表の①記載のとおり)を移転すべき義務を負ったものであるが、当初は右義務の一部(同別表の②記載のとおり)しか履行しなかったものの、その後、購入者のうち駐車場専用使用権の分譲を受けた被控訴人竹内ヒロ子、同末吉富美子、同堀江信子、同寒野つゆ子、同小野則夫、同藤原千代子、同田中政文、同板東光康、同杉本光枝、同髙本英治、同中原義憲、同形井洋及び脱退被控訴人伊藤信行に対しては、更にそれぞれ二四九〇分の一二(一一三七九三〇分の五四五八)ずつの共有持分を移転する旨の登記を経由したため、現在では、控訴人山内興産は、登記簿上、本件敷地共有持分を有せず、他方、右の二四九〇分の一二の持分を追加する移転登記を受けた者らは、いずれも本件各売買契約に基づいて移転を受けるべき割合を超える本件敷地共有持分の移転登記を受けたことにより、これ以上共有持分移転登記を求める権利を有しないこととなる。したがって、右被控訴人ら並びに脱退被控訴人伊藤信行から共有持分移転登記を受けた被控訴参加人小山田千鶴及び被控訴人形井洋から共有持分移転登記を受けた被控訴参加人山口和也の控訴人らに対する各請求はいずれも理由がない。
その余の被控訴人ら及び被控訴参加人らは、控訴人山内興産に対し、本件各売買契約に基づいて受けるべき各共有持分と実際に移転登記を受けた共有持分との差である原判決別表の③記載の各共有持分の移転登記手続を求めることができ、かつ、右被控訴人らは、右請求権を保全するため、各自、控訴人山内興産に対して有する右共有持分移転登記請求権の範囲内で、同控訴人が控訴人ジョイホームに対して有する共有持分移転登記請求権を行使することができることとなる(同被控訴人らは、各自、控訴人ジョイホームに対し、同控訴人が保有している本件敷地の共有持分二四九〇分一二の全部につき、控訴人山内興産への移転登記手続を請求するが、右請求は、売買契約に基づく義務の履行請求であり、共有物の保存行為には該当しないから、各人が、控訴人山内興産に対して有する権利を越えて、その権利を代位行使することはできない。)。」
4 同三二枚目裏七行目から同三三枚目表四行目までを削除する。
二 よって、控訴人山内興産の被控訴人福本(管理組合理事長)に対する控訴は理由がなく、控訴人らの被控訴人らに対する控訴は一部理由があるから、これに基づいて原判決を変更することとし、被控訴参加人らの控訴人らに対する参加請求のうち、一部理由がある分はこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用及び参加費用の負担につき民訴法九五条、九六条、八九条、九二条、九三条、九四条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官秋元隆男 裁判官池谷泉 裁判官川久保政德)